債権管理・回収業務における債権回収会社と弁護士の違い

企業経営において、効率的な債権回収は極めて重要な事項です。不良債権が増大したり回収に余計なコストがかかってしまったりすると、経営にとって大きな足かせとなるでしょう。
最悪の場合、倒産リスクも懸念されます。

債権管理や回収を自社で進めるのが難しい場合、「債権回収会社」に任せる方法と「弁護士」に依頼する方法の2種類があります。

両者には大きな違いがあるので、正しい知識をもっておきましょう。

今回は債権回収会社と弁護士の違いを解説しますので、債券回収の委任や委託を検討されている方はぜひ参考にしてみてください。

1.債権の管理・回収は全ての企業が関わる問題

企業経営において、債権管理回収業務を軽く考えてはなりません。
ずさんな管理をしていると、以下のような大きなリスクが発生します。

1-1.赤字転落リスク

債権をきちんと回収できなければ、当然企業の収益性が低下します。
あまりに不良債権が増えると利益率が減少し、ついには赤字に転落してしまう可能性も高まります。

1-2.生産性低下リスク

日々身を粉にして働いても、債権回収できて収益性を維持できなければ従業員のモチベーションも下がってしまいます。
社内全体の士気が低下して生産性が下がったり、退職者が増えたりする可能性もあります。

1-3.信用低下リスク

企業の収益性が低下して決算の内容が悪くなると、信用も失われます。金融機関から融資を受けようにも、融資してもらえない可能性が高くなってしまうでしょう。

1-4.倒産リスク

不良債権が増えて赤字に転落し、融資を受けようにも受けられなくなったら、最終的に倒産せざるを得なくなる可能性もあります。

以上のように債権回収管理業務は、中小零細企業を含め「すべての事業者」にかかわる重大事項です。
少額の債権でも積み重なると大きな金額になるので、未払い債権が発生したらすぐに回収できる体制を整えましょう。

2.債権回収を行えるのは弁護士、司法書士、債権回収会社

専門の法務部や債権回収部門を持たない中小零細会社が自社で債権回収業務を行うのは、簡単ではありません。そんなときには外部に委託する方法が有効です。
債権回収業務を委託できる外注先には以下の3種類があります。

・弁護士

債権回収をはじめとしたあらゆる法律問題を相談、依頼できる法律の専門家です。
回収できる債権額に制限はなく、裁判になっても代理人を任せられます。
簡易裁判所だけではなく地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所における事件にも対応できます。

・司法書士

140万円までの債権回収や商業登記、不動産登記などを依頼できる専門家です。
140万円までの債権であれば交渉や訴訟による回収業務を依頼できますが、140万円を超える場合には対応できません。
裁判になった場合、代理人になれるのは「簡易裁判所」の事件のみであり、控訴されて地方裁判所より上位の裁判所に事件が係属すると、対応できなくなります。

・債権回収会社

債権管理回収業に関する当別措置法(サービサー法)により、特別に債権回収業務を認められた専門業者です。事業者からの委託を受けて一定の種類の債権を回収する権限が認められます。債権回収業を行うには国の許可が必要であり、どの企業でも業務を行えるわけではありません。

3.弁護士と債権回収会社の違い

弁護士と債権回収会社にはどういった違いがあるのか、みていきましょう。

3-1.法務省による許可が必要か

債権回収会社が他者から依頼を受けて債権回収業務を行うには、国の許可が必要です。
そもそも「弁護士法」によると、他者から委託を受けて債権回収業を行ってもよいのは「弁護士」だけとされるのが原則です。債権額が140万円以下の場合のみ、例外的に司法書士による回収が認められています。

ただし「サービサー法」により、資本金額などの一定の基準を満たして国の許可を得た企業のみが債権回収業を行ってよいことになっています。許可を受けていない業者はすべて違法なので注意しなければなりません。
許可を受けた債権回収会社はこちらにまとまっているので、ご参照ください。
http://www.moj.go.jp/housei/servicer/kanbou_housei_chousa15.html

弁護士の場合、もともと弁護士法によって債権回収業をはじめとする法律事務を行う権限が認められているので許可は不要です。

3-2.回収できる債権の種類

債権回収業者と弁護士では、回収できる債権の種類も異なります。

債権回収業者の場合、回収を委託できる債権は以下のような特定金銭債権に限定されます。

  • 金融機関や貸金業者の貸付債権
  • リース・クレジット債権
  • 携帯電話代などの通信料
  • マンション管理費
  • 家賃
  • 診療報酬
  • ファクタリング業者の債権
  • 倒産手続き中のものの金銭債権
  • 保証契約による債権

弁護士であれば、上記に限らずあらゆる種類の債権回収が可能です。

3-3.依頼企業

債権回収業者の場合、上記のように回収できる債権が限定されている事情もあり、利用するのはある程度規模の大きな金融機関、貸金業者やリース会社などがほとんどです。

弁護士であれば、上記に限らずどのような債権も回収できるので、中小零細事業者や個人などでも気軽に依頼できる違いがあります。

3-4.債権回収の方法

債権回収業者と弁護士では、具体的な債権回収方法にも違いが生じます。
債権回収業者の場合、以下の2つの方法から選択できます。

・債権回収の委託

依頼企業が債権を有したまま、債権の回収のみを任せる方法です。回収できた金額の数十%の手数料を業者へ支払います。

・債権譲渡

債権回収業者へ債権を譲渡してしまう方法です。譲渡時に手数料を割り引いた代金を受取ることが可能です。

弁護士の場合、通常は「債権回収の代理」のみを依頼できます。料金としては、依頼時の着手金や回収時の報酬金が発生するケースが多いでしょう。一般的に弁護士に債権譲渡はできません。

3-5.債権回収業者を選ぶべきケース

債権回収の委託(依頼)先を迷ったとき、以下のような場合には債権回収業者を選ぶとよいでしょう。

  • 債権譲渡して早期にお金を受け取りたい
  • 通信料、貸金債権など多数で多額の特定金銭債権をまとめて一括で回収委託したい

ただし債権回収業者を選ぶときには、必ず「法務省による許可」を受けているかどうか確かめる必要があります。違法業者に依頼すると債権回収できないばかりか刑事事件にもなって大きなトラブルに巻き込まれる可能性があるので注意してください。

3-6.弁護士を選ぶべきケース

以下のような場合には、弁護士に債権回収を依頼しましょう。

  • 自社は中小零細業者であり、債権があまり高額ではない
  • 常に不良債権があるわけではなく、単発でときどき依頼したい
  • 債権回収業者に依頼するとコストがかかりすぎるのでリーズナブルに対応してもらいたい
  • 債権回収業務以外にも契約書チェックや労務管理などリーガルサポートを受けたい
  • 債権回収業者が法務省の許可を受けているかどうかわからず不安なので、確実に合法的な弁護士に依頼したい

4.債権回収会社や弁護士に債権管理・回収を依頼するメリット

債権回収を弁護士や債権回収会社などの他者へ依頼すると、以下のようなメリットがあります。

4-1.効率よく債権回収できる

弁護士も債権回収業者も、債権回収の専門家です。

自社ではうまく回収できないケースでも、依頼すると効率的に回収できる可能性が高くなるでしょう。たとえば自社の担当者が督促しても、相手が無視したり支払いを拒否したりするとき、弁護士に依頼して弁護士名で督促書を送れば、相手が支払いに応じるケースが少なくありません。

どうしても相手が支払わない場合には、支払督促や訴訟を起こして強制的に債権を回収することも可能です。

4-2.事業へ集中できる

自社で債権回収業務を行おうとすると、大変な手間がかかります。専門の法務部や債権回収部門がなければ、一般の従業員が回収業を担当しなければなりません。電話をかけたり督促書類を送ったりする際にもスピーディに対応しにくいですし、本来の業務がなおざりになってしまうでしょう。

弁護士や債権回収業者に回収業務を外注すると、経営者や従業員は本業に集中できるので企業の生産性を維持できるメリットがあります。

手数料を払っても、時間と労力を節約できるので全体的にはコストカットにつながるケースが多数です。

4-3.赤字・倒産を防げる

債権回収を行わずにずさんな管理をしていると、収益性が低下していき、赤字転落や倒産のリスクが発生するケースも少なくありません。
早い段階から弁護士などの専門家に依頼して債権回収を行っておけば、こうしたリスクは避けられます。

当事務所では地元茨城と東京に支店をおき、中小企業を中心としてリーガルサポートを提供して参りました。弁護士費用を払っても依頼企業様に利益を得ていただけるよう、リーズナブルな費用体系を用意しています。法律顧問も積極的に承っておりますので、まずは一度お気軽にご相談ください。

この記事は弁護士が監修しています。

片島 均(弁護士)弁護士法人法律事務所DUON
茨城県弁護士会所属(登録番号:42010)

交通事故、相続、借金破産、離婚、刑事事件、不動産、企業法務(労働問題)など幅広い分野に対応。
代表を務める弁護士法人法律事務所DUON はほぼ全ての分野の法律問題をお取り扱いしています。全体の案件数としては、地域柄もあり「離婚事件」や「交通事故事件」「破産事件」「相続問題」等のお取り扱いが多いですが、法人・事業者様の労使問題等にも力を入れており、特に地元の中小企業の経営者様を中心にご相談いただいております。

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