労働保険(雇用保険・労災保険)のQ&A集

Q1 雇用保険をかけている従業員が退職したら、どのような手続きが必要になりますか?

A1 雇用保険の対象となる従業員が退職したら、公共職業安定所(ハローワーク)へ以下の書類を提出しなければなりません。提出期限は退職日の翌日から10日以内なので、早めに対応しましょう。

  • 雇用保険被保険者資格喪失届
  • 雇用保険被保険者離職証明書(離職票)

離職票(雇用保険被保険者離職証明書)は3枚の複写式になっているので、記入したらまとめてハローワークへ提出してください。手続きが済んだら、ハローワークから離職票1と離職票2が会社に送られてきます。これらは従業員が失業保険を申請するために必要な書類なので、受け取ったら本人に早めに交付しましょう。

Q2 労働保険料はどのようにして計算するのでしょうか?

A2 労働保険料は、雇用者が労働者に支払う「賃金総額」に「労働保険料率」を掛け算して算出します。労災保険と雇用保険で料率や負担割合が異なります。

労災保険と雇用保険の両方に加入するのか、どちらか一方のみ加入するのかによって計算式が変わります。

パターン1 労災保険と雇用保険の両方に加入する場合

労働保険料=賃金総額×(労災保険率+雇用保険率)

パターン2 労災保険のみ加入している場合

労働保険料=賃金総額×労災保険率

パターン3 雇用保険のみ加入する場合

労働保険料=賃金総額×雇用保険率

労災保険率は事業の種類によって異なり、2.5/1000から89/1000の範囲で設定されます。
雇用保険率と事業主と労働者の負担割合も事業の種類によって異なります。

保険料率は毎年決定されるので、厚生労働省のページから確認しましょう。

労災保険料率
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/rousaihoken06/rousai_hokenritsu_kaitei.html

雇用保険料率
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000108634.html

Q3 労働保険料を計算する際の「賃金」には何が含まれますか?

A3 労働保険料を計算する際のベースとなる「賃金」には、以下のものが含まれます。

  • 基本給や固定給
  • 賞与
  • 超過勤務手当や深夜手当、休日手当
  • 扶養手当や家族手当、教育手当
  • 日直・宿直手当
  • 役職手当や管理職手当、技能手当、特殊作業手当
  • 地域手当、住宅手当、物価手当、調整手当
  • 単身赴任手当
  • 奨励手当
  • 通勤手当、交通費
  • 休業手当
  • 雇用保険料やその他の社会保険料(労働者の負担分を事業主が負担する場合)
  • 前払い退職金

Q4  労働保険は毎年更新しなければならないのでしょうか?「年度更新」とは何ですか?

A4 労働保険では毎年更新手続きが必要です。

労働保険料を計算する際には、毎年4月1日から翌年3月31日の1年間を単位とします。
また労働保険料は毎年6月1日~7月10日の期間に申告、納付しなければなりません。「新年度の概算保険料」と、「前年度に支払った概算保険料と実際の支払い実績をもとにした確定保険料の過不足を精算した額」の両方の計算をして納付しましょう。
このようにして毎年労働保険料の申告と納付を行って更新することを「年度更新」といいます。

Q5 労働保険の申告や納付が遅れたらどのようなペナルティがありますか?

A5 労働保険の年度更新(申告と納付)が遅れると、国が保険料や拠出金の額を決定します。遅れた日数分の延滞金が加算される他、追徴金として納付すべき金額の10%が加算されるリスクも発生します。

遅れないように、年度更新の手続きをしましょう。

Q6 労働保険料は、分割で納付できるのでしょうか?どのような手続きをすればよいのですか?

A6 労働保険料を分割納付できるケースはあります。

分割納付が認められるのは、労災保険と雇用保険の双方を納付するなら「概算保険料が40万円以上」となるケース、労災保険または雇用保険のどちらか一方を納付するなら「概算保険料が20万円以上」となるケースです。事業者が申請すれば分割払いが認められます。
保険料の分割払いを「延納」といいます。

延納は3回の分割払いとなり、納付期限は以下の通りです。

  • 第1期分…7月10日
  • 第2期分…10月31日
  • 第3期分…1月31日

上記が土日祝日の場合、翌日が期限とされます。

Q7 高齢者に対する雇用保険料の免除とはなんですか?今はもう廃止されているのですか?

A7 従前の制度では、65歳以上の従業員の雇用保険料が免除されていました。

しかし高年齢被保険者の雇用保険料免除は2020年4月1日に廃止されており、今は高齢者になっても保険料の納付が免除されません。
満65歳以上の従業員についても雇用保険料の徴収対象になるので注意してください。

Q8 雇用保険の手続きはどういったタイミングでしなければならないのでしょうか?

A8 初めて従業員を雇ったとき「雇用保険適用事業所設置届」を作成して公共職業安定所へ提出しなければなりません。

その後も従業員を雇い入れたら「被保険者資格取得届」の提出が必要です。
従業員が退職したときには「被保険者資格喪失届」と「離職票」の手続きをしなければなりません。
事業所の所在地や名称を変更する際などにも変更届の提出が必要です。
ハローワークへ求人を出す場合にも手続きを行う必要があります。

Q9 労働保険料の労働者と事業者の負担割合はどのくらいですか?

A9 労災保険料については事業主が全額負担しなければなりません。

雇用保険料については事業主と労働者が負担しますが、具体的な負担割合は業種などによって変わります。

Q10 経営者や役員にも労災保険は適用されますか?

A10 労災保険は「労働者」にしか適用されないので、経営者や役員は労災補償の対象になりません。ただし一定の要件を満たす事業主の場合、「労災保険特別加入制度」を利用すれば労災保険給付対象になります。

なお労災保険特別加入はあくまで「労働者と同様の保護」を目的とするものですから、事業主が「経営者として行う業務」によってけがをしても労災扱いになりません。

Q11 労災保険の特別加入制度とは何ですか?

A11 労災保険特別加入制度とは、経営者や役員など「労働者ではない人」であっても業務実態や災害発生状況からして「労働者に準じて保護すべき」と認められる人が労災保険に加入できる制度です。

特別加入が認められるのは、以下のような人です。

  • 中小事業主
  • 一人親方
  • 特定作業従事者
  • 海外派遣者

たとえば従業員と同様に自ら労働している中小企業の代表者や役員、建設業の一人親方が従業員を雇用せずに自分で労働している場合などは、典型的な特別加入制度の適用対象です。

Q12 労災保険の決定に不服がある場合、異議申し立てはできるのでしょうか?

A12 労災保険の申請をしても、必ず労災認定されるとは限りません。不支給決定となったり、障害等級が低くなったりするケースもよくあります。

不服があれば、決定を行った労働基準監督署を管轄する「都道府県労働局」の「労働者災害補償保険審査官」へ「審査請求」という方法で異議申し立てができます。
口頭でも審査請求は可能ですが、通常は「審査請求書」を提出します。審査請求書の用紙は労働基準監督署や都道府県労働局の労災補償課に備え付けてありますし、HPからもダウンロードできます。

なお審査請求には期限があり「労災保険給付決定があったことを知った日の翌日から3ヶ月以内」に行わねばなりません。

Q13 従業員が海外で病気にかかったら労災補償は受けられるのでしょうか?

A13 労働者が海外で病気にかかったりけがをしたりした場合には、「出張」か「出向(赴任)」かによって労災保険における取り扱いが異なります。出張とは「国内の会社で働く労働者がたまたま海外出張中に病気になった場合」です。この場合、業務上の災害と認められれば労災保険の適用対象になりますし、ボーナス特別支給金も支給されます。

一方、恒常的に海外で働いている「海外赴任者」の場合、基本的に労災保険の対象になりません。業務上の理由で病気にかかったり怪我をしたりしても労災保険は適用されないので注意が必要です。

Q14 海外赴任者の特別加入制度とは何ですか?

A14 海外赴任者の労災特別加入制度は、海外赴任する労働者が日本の労災保険に加入できる制度です。

海外赴任者の場合、原則的に労災保険に加入しません。しかし海外では日本の労災保険に該当する補償がない国や地域もあり、補償があっても日本の労災補償ほど手厚いものではない国が少なくありません。
そこで、海外赴任する労働者を保護するために「特別加入制度」が用意されています。

海外赴任者の場合も月給や賞与の金額をベースに保険料率を算定しますが、任地における物価や通貨価値の変動もあり、そのままの金額を補償ベースとするのは不適当と考えられます。そこで最終的な保険料率は、事業主が申告する給付基礎日額をもとに都道府県労働局長が決定する仕組みになっています。また国内労働者と異なりボーナス特別支給金は支給されません。

茨城県の企業や事業主の方で労働保険や社会保険の手続きに疑問がありましたら、お気軽にDUONまでご相談ください。